製茶における蒸熱工程の合理化を目的として,蒸熱による茶葉の力学的性質,交流インピーダンス,水分含量,および細胞組織などの変化を測定した。 まず,生葉の物理的性質は葉位順に変異していることが認められた。すなわち,下位葉ほどかたく,交流インピーダンスが大きく,その周波数依存性も大きい。水分含量は試料採取日による変動はあるが,下位葉のほうが少なかった。 蒸熱により10Hzの動的弾性率,および引張り初期の見かけの弾性率とも急激に低下したが,蒸熱時間にはあまり依存しなかった。破断ひずみは蒸熱30秒後に生葉より40%も増加し,その後,生葉よりやや小さくなった。破断応力は初めわずかに低下し,蒸熱時間が長くなるに従って減少した。交流インピーダンスは蒸熱によりその大きさが生葉の1/20ぐらいに低下し,周波数依存性も小さくなった。 茶葉の水分含量は蒸熱初期にやや乾燥するように見受けられたが,供試生葉の数値が変動するために断定しえない。生葉には裏面の気孔につながる海綿状組織の大きな空隙が顕微鏡下に認められるが,蒸熱によりほとんど消滅した。茎の水分は葉より多いが,動的弾性率および蒸熱によるその変化も葉とほとんど同じであった。