温州ミカンの各部位別ヘスペリジン含量を測定し,さらに温州ミカン搾汁工程中のヘスペリジンの挙動について検討し,次の結果を得た。 (1) 総ヘスペリジンの定量において,ヘスペリジンを可溶化させる最適条件はpH 11で10分間攪拌することにより完全に可溶化できた。 (2) 果実各部位のヘスペリジン含量は,アルベド3800mg/100g,じょうのう膜950mg/100g,フラベド830mg/100g,さじょう95mg/100gおよび果汁50mg/100mlの順であった。 (3) 搾汁圧が果汁のヘスペリジン含量に大きく影響し手搾りで圧力を0.3~10.0kg/cmcm2に変えることにより,可溶性ヘスペリジンは37.9~75.2mg/100mlになり,インライン搾汁機で98.0mg/100mlを示した。 (4) 搾汁工程中の総ヘスペリジン含量は,搾汁機,フィニッシャーおよび遠心分離機の各工程で,ほぼ100mg/ml前後で推移し,しかも,ほとんど可溶性ヘスペリジンの状態で存在した。しかし,濃縮工程で可溶性ヘスペリジンが20mg/100ml以下に減少した。 (5) パルプ18%を含むインライン搾汁直後の果汁は,1時間後61%のヘスペリジンが不溶化したが,パルプを除去することにより,1時間経過後も85%以上のヘスペリジンが可溶性の状態で存在し,パルプを含まない果汁では5時間後も全く不溶化しなかった。 (6) 濃縮工程でパルプを含む果汁は,糖度50°Bxで80~95%が不溶化したが,透明果汁は5%程度にとどまり,果汁中のヘスペリジン不溶化にパルプが大きく影響し,糖度および粘度はほとんど影響しなかった。