原子吸光法によるNa, K, Mg, Ca, Mn, Fe, CuおよびZnの定量のための前処理法として,塩酸抽出法の適用性をNBSの標準試料である穀類(SRM 1567のWheat flourおよびSRM 1568のRice flour)と果樹葉(SRM 1572のCitrus leaves),コメ加工品の「きりたんぽ」および各種海藻類(アオサ,アラメ,ナガコンブ,マコンブ,ミツイシコンブおよびホソメコンブ)の乾燥品を用いて乾式灰化法および湿式分解法と比較検討した。 試料をポリエチレンあるいはポリプロピレンびんにはかりとってから,1%ないし3%塩酸の50倍から200倍量を加えて,時々振とうしながら抽出することで,Na, K, Mg, Ca, Mn, CuおよびZnはほぼ完全に抽出され,Feを除いた他の7元素の定量に塩酸抽出法が適用できることが判った。 塩酸抽出法は元素の種類,試料中の元素含有量によって使用する塩酸濃度,使用量,抽出時間を選択する必要があった。穀類および海藻類試料中のNa, K, Mg,Ca, MnおよびZn,果樹葉試料中のNa, K, Mg, MnおよびZnは1%塩酸50倍量を使用して1時間で抽出され,果樹葉中の高含量CaおよびCuは3%塩酸100倍量を使用して1時間で抽出された。 この方法によって多数点試料を廉価,簡便かつ迅速に前処理することができる。