温州ミカンの果皮には,果実発育過程を通してアスコルビン酸酸化酵素(AAO)の活性が認められる3)ので,まずミカン果皮の分析用試験液の調製条件について検討した。その結果,(1) 試験液調製前に果皮のAAOをマイクロ波処理により完全に破壊しておくこと,(2) 果皮試験液中に含まれる総C定量に対する妨害因子を,あらかじめ酸性白土処理により吸着除去することが必要であることを認めた。これらの前処理を行った後に調製した果皮および果肉試験液中の総C, AsAおよびDAsAを差スペクトル法を用いて分析し,ミカン果実発育中のこれらビタミンCの変動を追跡した。 ミカン果皮中の総C濃度は果実発育の初期(6月下旬)には高かったが,その後8月中旬までは急速に低下し,成熟期に這入って再び増加するという特徴的な季節的変化がみられた。この総Cのミカン果実中における動的変動を知るために,1果当りの総C量を計算したところ,その量は発育初期より8月下旬までは僅かな増加であったが,それ以降は急激な増加に転じてAsAが果皮内に急速に蓄積されて行くことが認められた。果肉中の総Cについても果皮の場合と同様の変動傾向がみられた。発育各段階におけるミカン果皮および果肉中の総CのほとんどすべてはAsAであり,DAsAは僅少であった。