塩漬加工された野沢菜は,数日以内にある種のオフフレーバーを生成する.今回,漬込み48時間後の野沢菜漬を用いてオフフレーバー成分の同定を試みた.減圧蒸留により回収した揮発性成分から常法によりフェノール性画分を得,フロリシルカラムを用いて分別を行ったところ,目的のオフフレーバー成分は,ヘキサン/エーテル(1:1)で溶出された.これをフロリシルカラムを用いて種々の割合のヘキサン/エーテル混液によりさらに分別したところ,オフフレーバー成分は同混液(2:1)及び(1:1)で溶出された. GC-MS分析により,オフフレーバー成分は1-シアノ-3, 4-エピチオブタンおよび1-シアノ-4, 5-エピチオペンタンの混合物であることを確認した.両成分の比率の変化と匂いの性質の関係についてはなお検討する必要がある.両成分はアブラナ科野菜に含まれるω-アルケニルグルコシノレートから漬込み中に生成することから,野沢菜以外のアブラナ科野菜の塩漬加工品にも存在するものと考えられる.