デンプンの糊化による構造変化および糊化度の近赤外法による計測について検討を行い,以下の結果を得た. (1) 糊化度の異なるデンプンの近赤外吸収スペクトルを調べたところ, 1204, 1368, 1436, 170O, 1748, 1784,1924, 2088, 2280, 2320および2348nm近傍の吸収度の変動(分散)が大きかった.特に, 2088および2280nm近傍のスペクトルは,糊化の進行に伴い複雑な変動を示した. (2) BAP法の糊化度またはデンプンの粒度をそれぞれ目的変数とし,吸光度の2次微分値を説明変数とする回帰分析を行ったところ,ともに1807および2095nmで高い相関が得られた. (3) デンプンの吸収帯が存在しないことから, 1807nmにおける高い相関は,その原因の1つとして粒度などの物理的な要因に基づくものと考えられた.(4) 糊化度と粒度の間には,高い正の相関(r=0.96)が認められた.糊化度が進むにつれて,デンプンの粒子が大きくなるものと考えられた. (5) 2100nm近傍のスペクトルデータは,粒度などの情報とデンプンの構造変化の情報が重なっていることから,主成分分析により,情報の分離を行ったところ,得られた第2主成分スコアと糊化度との間に高い直線性(r=0.98)が認められた. 以上のことから,近赤外法によりデンプンの糊化度を計測できることが明らかとなった.