米飯の動的粘弾性と官能評価との関連,ならびに検査試料の同一性について検討するため,平成3-4年度産の18種類の粳米を用いて官能検査を行うと同時に,供試米飯から採取した米飯粒の動的粘弾性測定を行った.産出年度の違いによる測定値変動や,動的粘弾性パラメータと官能評価項目間の相関を検討した結果,次のような知見が得られた. (1) 官能検査を繰り返した際の米飯試料の品種特性の再現性を動的粘弾性の面から調べた結果,tanδでは再現性が認められたが,他のパラメータは再現性が低かった. (2) 平成3-4年度産の日本晴とコシヒカリの機器測定結果から,コシヒカリでは5%有意水準で年度間差が認められたのに対して,日本晴では差が認められなかった.また,日本晴・コシヒカリ両品種と他の品種との測定値による有意差は,tanδでは5%有意水準で差が認められたが,G', G”では差の認められない品種が多かった. (3) 2年間にわたって行った官能試験と動的粘弾性測定の結果を総合して相関を調べた結果,tanδと「粘り」では0.855, G'と「かたさ」では0.817の相関が見られた.また,G”はどの評価項目とも関連しないことが明らかとなった. (4) 動的粘弾性パラメータ相互の相関は,tanδとG'では-0.708, G', G”では0.722の相関がみられが,G'とtanδでは無相関であった. (5) 産出年度ごとにG'と「かたさ」,およびtanδと「粘り」の単回帰式を求め,各回帰係数の産出年度間差について有意差検定を行った結果,危険率20%でも有意な差は認められなかった.