WPIの有効利用を検討する目的で,WPIに減圧状態で予備的な高温加熱処理(予備加熱と略)を実施し,その予備加熱WPIの加熱ゲル物性に及ぼす影響を検討した.得られた結果の要点は次のとおりである. (1)比較的低温(70℃)で加熱した場合でも,予備加熱(120℃,1時間)したWPIは対照WPIよりもやや硬いゲルを形成した.予備加熱WPIを90および100℃で加熱すると,対照WPIよりもかなり強固でしかも弾性率の高いゲルが形成された. (2)予備加熱WPIの粘性挙動がレオペクシーからチキソトロピーへと変化することから,ゲル化に必要な活性化エネルギーの現象を伴った,ゲル化の前兆現象が予備加熱したWPIに生じていることが示唆された. (3)HPLC分析により,予備加熱WPIに構造変化を想定するようなタンパク質分子の分子形状構造および表面荷電の変化が認められた.とくにβ-Lg画分の変化が著しく,加熱ゲル物性の予備加熱による変化の主要因はβ-Lgの熱変性によるものと推察された.