ホエータンパク質の機能特性について検討する一環として,WPIの加熱凝集性に及ぼすCa2+の影響について検討した.その結果,次のことが明らかになった. まず,WPI中のCa2+を原子吸光分析により測定した結果,10%WPI溶液は3.01mMのCa2+を含有していた.透析によってWPI溶液から1mMの遊離のCa2+が除去された.蒸溜水に対して透析する前に10%WPI溶液に50mMCa2+を添加し,その後蒸溜水に対して透析した結果,10.15mMCa2+がWPIに結合した.2%WPI溶液を5mMCa2+存在下で80℃で30分間加熱すると,80000×gで30分間の遠心によって沈殿してくるWPIに,1.27mMCa2+が結合することが明らかになった.WPI溶液の濁度の経時変化を1分間に3℃ずつ,30℃から95℃まで上昇させるようにセットした直線的温度上昇法により測定したところ,透析処理は1%のWPI溶液の加熱凝集性にほとんど影響を及ぼさなかった.1mMCa2+が添加されるとWPIの加熱凝集性はわずかに増加した.WPI溶液の加熱凝集温度は5mMCa2+によって著しく減少した.WPIの透析実験中に得た濁度の変化はWPIへ直接結合するCa2+がWPIの加熱凝集に関与していることを示唆している.2mMDTTの添加は未透析および透析WPI溶液の加熱凝集温度を減少させた.これらの結果は,結合および遊離のCa2+の双方がWPIの加熱凝集に影響を及ぼして,さらにDTT存在下で発生するWPI分子の構造変化がWPIの加熱凝集性の及ぼすCa2+の効果をさらに増大させることを示唆している.