海産無脊椎動物の筋肉や内臓に多く含まれるグリシンベタイン(GB)の閾値と味質を調べるとともに,GBを多量に含むエゾボラ筋肉の合成エキスを用いてオミッションテストとアディションテストを行い,その呈味効果を検討した.得られた結果は次のように要約される. (1) GB水溶液と水とを組み合わせた3点識別試験により閾値を調べたところ,0.25gから0.5g/100mlの間にあると判断された. (2) GB水溶液の味質は,0.5gから1.5g/100mlの間では甘味に苦味を伴うものであり,文献に記載されている「甘い,あるいは爽快な甘味をもつ」という表現は改める必要があることを指摘した. (3) オミッションテストでは,GBを除いても5基本味の強さに有意な変化が認められなかった.また,GBのアディションテストでも,甘味の強さに有意な増加は認められなかったが,6種の甘味アミノ酸を除いた合成エキスヘのGBのアディションテストでは,甘味の強さは有意に増加した.この結果は,GBの甘味付与効果が従来考えられてきたほど強いものではないことを示すものである. (4) GBは味に濃厚感や複雑さなどを付与する効果があることが示唆された.