本研究では,Beta orange strainとDelta strainを交配し,そのF1およびF2個体のカロテノイド生成を調べ,カロテン類の生成系統について検討した. F1においてはα-カロテンが親strainに比べ特異的に増大するとともにε-カロテンも増大した.F2個体は9群に分離したが,それらのうち4群はα-カロテンが多く,2群では若干含有し,3群では含有しなかった.ε-カロテンはα-カロテンを含有するものからのみ生成することが認められた.このことから,α-カロテンの生成にはBeta orange (B)とDelta(Del)が相補的に強く関与する.また,ε-カロテンの生成にはgene Delが関与するが,gene Bが先駆的に関与することが認められた.すなわち,gene Bはβ-ionone環化に関与し,β-カロテン生成能は BB>B+B>B+B+ の関係にある.geneDelはε-ionone環化に関与し,δ-カロテン生成能は DelDel>Del+Del の関係にあり, Del+Del+ では生成されない.また,α-カロテン,ε-カロテンの生成にはgene B とgene Del が関係するが,その生成能はBBDelDel(両劣性)において最も顕著に現れる。これについで B+BDel+Del でかなり現われ,また, B+B+DelDel では僅少であった.しかし, B+B+Del+Del+ ではε-カロテンは全く生成されなかった.