米飯粒と米澱粉レオロジーとの関連性を調べるため,前報の米飯粒の場合と同じ測定手法,並びに試料を用いて糊化澱粉の動的粘弾性測定を行った.米飯粒の測定に供試した5品種の精米より澱粉を抽出し,糊化条件(加熱時間・加水量)や老化状態の異なる試料を作出した.これらを,動的弾性率(G'),動的損失(G”),及び損失正接(tanδ)の挙動という観点から,米飯粒と比較することにより次のような知見が得られた. (1) 各パラメータの変動率は,米飯粒の場合と同様に品種や加水量,加熱時間によらず,室温で1時間放置した試料のG', G”は10-20%の値を示したのに対して,tanδでは10%以内であることが確認された. (2) 含水率は50-55%では,1時間放置試料のG', G”が急激に減少するのに対して,tanδは僅かに減少するだけであり,品種間のtanδの大小関係も変わらないことを確認した.また,24時間放置試料の場合との比較から,含水率55-60%では動的粘弾性パラメータの経時的な変化が生じ難いことが示された. (3) 1時間放置試料の場合,全品種のG', G”が加熱時間により変動率の範囲内で僅かに変化しただけであったのに対して,tanδでは明かな増加傾向が見られた.24時間放置試料は,加熱時間によりG', G”が大きく変化する品種もあったが,tanδでは各品種とも加熱時間によらずほぼ一定の値を示した. (4) アミログラム特性値のブレークダウンと糊化澱粉の動的粘弾性との関連を調べた結果,米飯粒の場合と同様にtanδとの間に正の相関が認められ,G'との間には負の相関が認められた. (5) 伝熱加熱およびマイクロ波加熱炊飯した米飯粒(含水率60%)と糊化澱粉(含水率60%)のG'を比較すると,各品種とも糊化澱粉の値は米飯粒の20%程度であった.一方,糊化方法に依らず品種間のtanδの大小関係が等しく,マイクロ波加熱炊飯米と糊化澱粉でtanδがほぼ同じ値を示した.