血清アルブミンに飽和脂肪酸(炭素数12, 14, 16, 18)を結合させ,その乳化活性と構造の安定性について検討した. (1) 血清アルブミンへ脂肪酸を結合すると,その乳化活性は鎖長の短いラウリン酸を結合した場合に最も改善され,鎖長の長い脂肪酸を結合した場合には逆に乳化活性の低下が認められた. (2) 表面疎水性は,脂肪酸を結合することにより減少した.また,表面圧は,炭素数の少ないラウリン酸を結合した場合に最も低くなり,炭素数が多くなるに従って増加した. (3) 円偏光二色性(CD)スペクトル,トリプトファン残基の自然蛍光スペクトルの結果から,血清アルブミンの構造に対する脂肪酸結合の影響は,脂肪酸の鎖長によって異なると考えられた. (4) 変性剤(尿素)および加熱に対する安定性は,脂肪酸を結合することにより向上した.特に,鎖長の短い脂肪酸を結合した場合にこの効果が顕著であった. 鎖長の短い脂肪酸を結合することにより,トリプシンによる分解を受けにくくなった.ペプシンによる分解に対しては脂肪酸の結合による効果は認められなかった.