加熱前の食パンの水分含量の違いがトーストのクラスト層の形成および着色状態に及ぼす影響,さらにこの影響に対してヒータの放射波長特性の違いがどのようにかかわるかを検討した.その結果,以下のことが明らかになった. (1)加熱前の試料の水分含量が高いほど,クラスト層が形成される時期は遅く,クラスト層は薄く,その水分含量は高かった.また,加熱前の試料の水分含量の違いにかかわらず,長波長領域における放射率が高いヒータで加熱した場合ほど,クラスト層の形成は早く,その水分含量は低かった. (2)クラムの水分含量は,加熱開始直後に一旦低下し,その後増加し,加熱前の試料の水分含量より高くなった.加熱前の試料の水分含量が高いほど,また長波長領域における放射率の高いヒータで加熱した場合ほど,加熱後のクラムの水分含量は高かった. (3)食パン表面の焼き色は,水分含量が高いほど薄くなった.また,加熱前の試料の水分含量の違いにかかわらず,長波長領域における放射率が高いヒータほど焼き色は濃くなった.