醤油中の鉄結合成分についてSephadex G-25によるゲル濾過クロマトグラフィーにより検討した.醤油は吸光度により高分子側よりP1-P5の成分に分画され,大部分の鉄はP1及びP2に存在した.しかし,アミノ酸,糖,有機酸などの低分子物質のみからなる醤油様溶液中では鉄は低分子量域に溶出された.醤油に更に鉄を添加しても鉄はほとんど高分子量域に溶出した.P1及びP2中の鉄はエチレンジアミン4酢酸及びアスコルビン酸の添加により遊離され,低分子領域に溶出された.また,P1及びP2中の鉄はSDS, 2-メルカプトエタノール及び蛋白質分解酵素処理により影響をあまり受けなかったが,過ヨウ素酸処理により低分子域へ移動した.実験室的に醤油を調製して各段階でP1及びP2に相当する部分の鉄を分析したところ,P1の鉄は製麹段階で,P2の鉄は大豆の蒸煮及び熟成時に主に形成された.