米飯のおいしさに求められる要因のうち,味に着目し,味に関与すると思われる成分の定量および偏在状態の検討を目的とした.特徴的な性質を有する3品種(コシヒカリ,ともゆたか,およびリンクス89)の生米の全粒部および外層部を試料とし,以下の結果を得た. (1) 全糖は,全粒部および外層部ともにともゆたかに多く含まれたが,外在率では品種間に差がみられなかった. 還元糖は,全粒部ではコシヒカリに多かったが,外層部ではともゆたかに多く,外在率はコシヒカリでやや低い値となった. 3種類の遊離糖のうち,シュクロースが総含量の約90%をしめた.また,シュクロースはいずれの品種においても60%以上の高い外在率を示した.フラクトースおよびグルコースの外在率は約23%と近い値であった.いずれの糖も,ともゆたかにもっとも多く含まれたが,外在率はもっとも低い値であった. (2) 遊離アミノ酸は,3品種ともにアスパラギン酸,グルタミン酸,セリン,アラニンが比較的多く,この4種類で全アミノ酸の56-71%(全粒部),76-80%(外層部)を占めた.全アミノ酸含量は,全粒部ではともゆたかに多かったが,外層部ではコシヒカリとともゆたかはほぼ同量であった.外在率はアミノ酸の種類および米の品種によって異なり,全体的にみてコシヒカリにおいてやや高い値を示した.