野菜の硬さに対する加熱前の圧力処理効果について検討した.試料はダイコン,ニンジン,ゴボウおよびジャガイモとした.試料を50-500MPaで0-120分,室温で加圧処理後,99.5℃で加熱し,硬さを測定した.試料を一定時間加熱した後の加圧試料と未処理試料の硬さの比(硬さの相対比)は圧力の大きさおよび加圧保持時間と共に増加した.圧力前処理は400MPaまでで十分な効果が得られた.種々の野菜を400MPaで120分加圧した後,30分加熱したときの硬さの相対比は2-3の範囲にあった.また圧力前処理による野菜の軟化の抑制は,その後の加熱において適度な硬さを通過する時間を約2倍長くする効果があった.短時間の加圧処理後に常圧下で放置すると加圧保持とほぼ同等な軟化の抑制効果がみられた.このように加圧保持と圧力解除後の大気中での放置との置き換えが可能であることは,加圧によってまず細胞膜の破壊が起こり,続いて経時的に起こる細胞内外の液の溶出などの変化が両者で類似していることを示唆している.ダイコンを加圧した後,常圧で放置したときの放置時間の増加に伴う相対的な硬さの増加と重量減少が対応したことから,加圧による硬化の機構に水分の減少が関わっていることが示唆された.本研究は,常温で行う圧力前処理が過度の軟化を防止する手段として予備加熱に代わりうる手段であることを示すものである.