放射伝熱による焼き加熱において,電気入力を一定にした場合,ヒータの種類の違いに起因する放射伝熱量および放射波長特性が食品の仕上がり状態に及ぼす影響を調べた.結果の解析に際し,放射伝熱量および放射波長特性の影響を分離するため,放射伝熱量を独立変数とした回帰分析を行った.その結果,以下のことが明らかになった. (1) 電気入力が同じでも,ヒータの種類の違いによって食品に向けて放射される熱量,すなわち放射伝熱量は異なる.放射伝熱量は,近赤外線を多く放射するヒータほど大きく,ヒータの種類により,最大約24%異なることがわかった. (2) クラスト層の厚さは,近赤外線領域以降を主に放射するヒータで加熱した場合,加熱時間にかかわらず放射伝熱量の影響を強く受ける.これに対し,可視光領域を主に放射するヒータで加熱した場合,クラスト層の厚さは,加熱初期においては放射波長特性の影響を強く受け,加熱時間の経過に伴い,放射伝熱量の影響を強く受けるようになる.クラスト層の水分含量は,いずれのヒータにおいても,加熱初期には放射伝熱量の影響を強く受け,その後,放射波長特性の影響が強くなる. (3) 着色状態は,近赤外線領域以降に放射ピークのあるヒータで加熱した場合,加熱初期において,放射波長特性の影響を強く受けるが,その後,放射伝熱量の影響を強く受ける.可視光領域に放射ピークのあるヒータでは,加熱全般を通して,着色状態は放射波長特性の影響を強く受ける.