小ウメ果実および小梅漬けから細胞壁多糖類を分画し,それらの化学組成と硬度の関係について検討した.両者の各細胞壁多糖類画分の主成分はペクチン質(PS)画分がガラクツロン酸(AGA),ヘミセルロースI(HC-I)画分が中性糖と蛋白質,ヘミセルロースII(HC-II)画分が中性糖と灰分,セルロース(CL)画分が中性糖であった.一方,塩蔵中の小梅漬けの硬度と多糖類組成はCa添加の有無により明らかな差異を生じた.すなわち,軟化した対照区はHC-IとCL画分が減少し,PS画分が増加したのに対し,硬度が保持されたCa区はPS画分が減少,CL画分が増加した.またCa区のPS画分は低メトキシル基化が起こり,その灰分とCa含量が増加したのに対し,CL画分は中性糖(特にClc)が減少し,灰分,CaおよびAGAが増加した.さらにその糖組成の結果から,CL画分にはAGAやAra, Gal等の中性糖に富んだ多糖類が存在し,これらがセルロースミクロフイブリルと強く結合していることが示唆された.以上の結果から,小梅漬けの硬度差は主として二次細胞壁に存在するCL画分と他のマトリックス多糖類との結合機構の違いを反映したものと考察した.