酢酸の酵母に対する呼吸阻害作用機作の解明を目的として, Debaryomyces hansenii NRIC 1501を用いて菌体内への酢酸の移行,TCAサイクル関連有機酸量及び関連酵素活性に及ぼす酢酸の影響について検討した. (1) 0.2M酢酸添加培地(pH 5.0)中で30分間培養後の菌体内酢酸量は生理的濃度(0.15mg/g dry cells)の約20倍に増加し,酢酸の菌体内への移行・蓄積が確認された. (2) 酢酸添加培地での培養における菌体内及び培地中のTCAサイクル関連有機酸量は,いずれも対照に比べて低いレベルにあった. (3) 200mM酢酸によってIsocitrate dehydrogenase, Malate dehydrogenase, OGDHC, PDHCが阻害された.特にPDHCは酢酸に対する感受性が極めて高く,0.2mM酢酸によって完全に阻害された. これらの結果から,酢酸の一次的阻害部位はPDHCにあると推定され,菌体内に移行し蓄積した多量の酢酸がPDHCを阻害することによりTCAサイクル有機酸の減少や生育の低下が引き起こされるものと考えられた.