食物繊維の加熱による影響を知るたあに,生および乾熱大豆を用い,その多糖類組成を調べると共に,生理的効果の一つである金属吸着能についてアルミニウムイオンを用いて実験を行った. 脱皮大豆細胞壁多糖の構成は,生・乾熱大豆ともにヘミセルロース区分が最も多く,次いでペクチン質区分,セルロース区分の順であった.粗多糖の収量は生に比べ乾熱大豆で高く,またペクチン質区分,ヘミセルロース区分では,乾熱大豆でより低分子していた.またイオン交換クロマトグラフィーによる分離の結果,生大豆は主として酸性側,乾熱大豆は中性側の多糖で構成されることが認められた.多糖を加水分解後HPLCで測定したところ,構成糖は多い順にガラクトース,次いでアラビノースまたはウロン酸であった.また,ペクチン質区分1(熱水抽出)のみガラクトースよりアラビノースの割合が高く,これらの傾向は生・乾熱大豆ともに違いは認められなかった.乾熱大豆では生大豆に比べてガラクトースの割合が多かった. 一方,アルミニウムイオンを用いた吸着能の実験から,大豆種実から分画抽出した多糖の吸着能は,ペクチン質区分1で最も高く,次いでペクチン質区分2(シュウ酸アンモニウム溶液抽出),ヘミセルロース区分1(水酸化ナトリウム溶液抽出)の順であることが明らかになった.なおその吸着量は生大豆が乾熱大豆の約10倍と高かった.一方ヘミセルロース区分2(水酸化カリウム溶液抽出),セルロース区分では,生・乾熱大豆ともにほとんどアルミニウムイオン吸着は認められなかった.また種皮のペクチン質区分でのアルミニウムイオン吸着力は種実の10%前後とかなり低かった.大豆種実から抽出した水溶性食物繊維(SDF)は各分画多糖より高いアルミニウムイオン吸着を示したが,加熱により緩やかな低下が見られ,吸着量は生,乾熱,蒸煮の順であった.