昆布加工工程で使われる乳酸,NaClあるいはSucを含むモデル調味液に浸漬し加熱した昆布の細胞壁構成物質をCRONSHAWらの方法で分画し,それらの物理化学的性状について調べた. (1) 各溶液中で浸漬加熱した昆布の重量減少率は,軟化が著しい乳酸区およびNaCl区で大きかった.また,乳酸区およびNaCl区の場合,水で抽出除去される細胞壁構成物質の比率が大きく,したがって,この後に分画されるアルカリ不溶性画分およびα-セルロース画分の比率は相対的に大きくなった. (2) 各画分の吸水能は,出発物質では,Suc区やNaCl区が大きく,乳酸区は小さかった.α-セルロース画分では,昆布の軟化が著しい乳酸区やNaCl区が小さかった. (3) いずれのα-セルロース画分も,典型的な微結晶セルロースと同じX線回折パターンを示した. (4) α-セルロース画分のセルロース溶媒Cadoxenに対する溶解性およびセルラーゼによる分解性は,昆布の軟化が著しい乳酸区やNaCl区が大きかった.