近赤外分光法により,スモモ果実の追熟過程の時系列的な解析を行い,以下の結果を得た. (1) スモモ果実の近赤外吸収スペクトルは,追熟にしたがい,そのベースラインが顕著にシフトした.このベースラインシフトは,果実の構成細胞間の中層組織が肥大したことで,近赤外光の吸収深度が深くなったことに起因するものと考えられた. (2) 上のベースラインのシフトとは無関係に,1410nm近傍の吸収ピークは著しい増大を示した.これは,帰属される化学成分を特定できないが,果実のアルコール不溶性固形物に含まれる果実細胞成分の変化に関する情報を反映した結果であると考えられた. (3) 近赤外法における検量線は,作成する果実の熟度の影響を受け,精度が低くなることが分かった. (4) 検量線作成時に熟度の異なる果実を供試することで,熟度の影響を補正できる検量線を得た. (5) 近赤外法による果実硬度測定の原理は,果実の物理的特性の変化によるベースラインのシフトなどの果実硬度に関する情報を捉えた結果ではないかと思われた.