煎茶は蒸熱,粗揉,揉捻,中揉,精揉,乾燥,火入れという7工程によって製造されているが,その各工程後の茶葉の成分変化と成分浸出性について検討した. (1) 中揉工程以降の茶葉において明るく透明感のある黄色の水色中に緑色を帯びた浸出液が得られた. (2) 総ビタミンC含量は加工工程を経た茶葉ほど減少した.浸出液中の総ビタミンC量は工程を経るにつれて増加したが,特に揉捻までの加工処理が浸出量の増加に寄与した.煎茶(火入れ茶)の総ビタミンC浸出率は100%であった. (3) 苦渋味成分であるカテキン類,苦味成分であるカフェインは煎茶製造中,安定で,茶葉における含量の変化が認められなかった.浸出液中のカテキン類,カフェインは揉捻工程まで浸出量が増加したが,以降の工程においては更に増加しなかった. (4) 茶葉中の総遊離アミノ酸は煎茶製造工程中,減少する傾向を示した.浸出液中の総遊離アミノ酸,特にうま味成分であるテアニンは荒茶の乾燥工程まで増加した.最後の火入れ工程を経た煎茶(火入れ茶)の遊離アミノ酸浸出性は低下した. (5) 茶葉中の甘味成分である遊離糖,特にスクロースは工程を経るにつれて減少した.スクロースの浸出性は,乾燥,火入れの最後の2工程で高くなった. 以上の結果から,煎茶製造工程は単に生葉の酵素を失活させて均一に乾燥させるだけが目的ではなく,煎茶としてふさわしい色,風味を生成させるために煎茶製造の7工程が必要であることが確認できた.