近赤外法による,イチゴ果汁の全糖含量,Brix値および酸含量の測定精度,試料温度の影響,並びに検量線の採用波長の帰属について検討し,以下の結果を得た. (1) 試料温度を一定にした場合は,全糖含量,Brix値および酸含量について,SEPがそれぞれ0.09% (w/v), 0.09° Brix,および0.033% (w/v)となる高い測定精度の検量線が得られた. (2) 温度を変動させた場合は,全糖含量およびBrix値については一定温度の場合とほぼ同等のSEPの検量線が得られたが,酸含量についてはSEPが高くなった. (3) 試料の糖組成にばらつきがあり,さらに酵素の作用により,実験中に糖組成が変化したにもかかわらず,全糖含量の測定において高い測定精度の検量線が得られた.この理由は,果糖およびブドウ糖がほぼ同量含まれる水溶液は,検量線の採用波長付近にショ糖水溶液と同様の吸収を有すること,および供試したイチゴ搾汁液に含まれる果糖・ブドウ糖の含量がほぼ同じであることであった. (4) 全糖測定用の複数の検量線で採用された1666nm付近の波長は,酸による吸収を有さない波長であった.