ジャガイモから分離した細胞および単離デンプンを用いて,細胞内デンプンの糊化について検討を行った.細胞内デンプンの偏光十字消失割合および細胞のDSCの特性値は,単離デンプンの場合に得られた値とほぼ同じであった.細胞内デンプンの溶解度は,加熱時間が20分では単離デンプンに比べて低かったが,60分加熱するとほぼ同じ値となった.細胞内デンプンの膨潤力は単離デンプンに比べて低かった.これらの結果から,ジャガイモの細胞内デンプンが糊化する際の規則構造の崩壊は,単離デンプンと同じ機構で起こるものの,デンプンの溶解および膨潤は単離デンプンに比べてやや抑制されることが明らかになった.また,ジャガイモの場合は豆類の場合と異なり,デンプンの規則構造の崩壊に必要な水が十分に細胞内に供給されると推定された.