単一装置を用いた複数の物性試験によって米飯1粒の物性を多面的に定量化して,米飯テクスチャーの客観的評価方法としての有効性を検討した結果,以下の結論が得られた. (1) 低圧縮率で米飯表層の硬さと粘りの両物性の品種・系統間の差異を明確に捉えるためには最低25%の圧縮率での測定が有効であることが示された. (2) 圧縮試験の再現性については圧縮率の増加に伴って変動係数が小さくなる傾向にあり,低圧縮率よりも高圧縮率での圧縮試験のほうが測定項目のばらつきが小さかった.また,測定項目のばらつきは,各圧縮率とも硬さよりも粘りの方が大きかった. (3) 低圧縮試験(25%)および高圧縮試験(90%)の組み合わせによって,米飯粒の表層及び全体の物性評価が可能になり,品種・系統間の微妙な物性の相違を米飯粒1粒レベルで捉えられることを明らかにした. (4) 積算加重試験の測定項目である弾性限界距離(Elastic Limit Length)は,変動係数が比較的小さく,新しい視点から米飯物性を特徴づける可能性が示された. (5) 本研究で新たに導入した低圧縮試験の硬さと積算加重試験の弾性限界距離との2次元表示によって,品種・系統の物性を比較的良好に特徴づけることが可能であり,これらの方法が米飯食味のテクスチャー評価手段として有効であることが示された. 以上のことから,今回用いたコンピューター制御による改良型のテンシプレッサーでは単一装置による複数の物性試験(高圧縮試験・低圧縮試験・積算加重試験)が可能であり,またこれら複数試験によって米飯物性の多面的な評価が可能となり,新形質米品種・系統間の米飯物性の差異を詳細に捉えられることを明らかにした. 本報告の概要は,平成6年3月の日本食品科学工学会第41回大会において口頭発表した.