連続式豆乳製造方式を用いた豆腐ゲルの性質を,伝統的豆腐製造方式(バッチ式)によるものと比較した.バッチ式で作った豆乳に凝固剤としてグルコノデルタラクトン(GDL)を加え,通常の加熱条件下(90℃)で凝固させたゲルは,走査電顕観察の結果,しっかりとした網状構造を保っていたが,高温,高圧下(120℃, 2.0kg/cmcm2)で凝固させたゲルでは網状構造の破壊が観察された.連続式で作った豆乳では,通常の加熱条件下で凝固させたGDLゲルと,高温,高圧下で凝固させたGDLゲル共にしっかりとした網状構造を保っていた. これらの豆腐をテンシプレッサーを用いて物理的性質の測定を行ったところ,バッチ式の豆腐では高温,高圧下での凝固により豆腐全体が硬くなり,豆腐の凝集性は失われ,全体的に収縮した状態を示した.連続式の豆腐では高温,高圧下での凝固により豆腐の硬さは増したが,豆腐の凝集性は維持されており,大きな収縮は認められなかった. 豆乳の作り方の違いによるこの様な豆腐ゲルの性質の相違は,大豆磨砕工程から「ご」加熱工程までの時間に影響を受けることから,大豆に内在する酵素の作用が原因の一つと推定された.