加熱食肉製品の膨張変敗原因菌として分離されたヘテロ発酵型乳酸菌(Lactobacillus viridescens PSC-Y 510101, Leuconostoc mesenteroides PSC-Y 539901,Lactobacillus brevis PSC-Y 511701)による膨張変敗が,添加される糖質甘味料と密接に関係すると考えられた.そこで各種糖質(グルコース,スクロース,フルクトース,ラクトース,ソルビトール,マルチトール)を用いてその効果を検討し,以下の結果を得た. (1) 判定培地においてコントロール区(糖質無添加区)のL.brevis接種区を除くすべての試験区において,濁度の上昇やpHの低下が認められ供試菌の生育が確認された.それらの変化の程度は,グルコース,スクロースおよびフルクトース添加区で顕著であったが,コントロール区,ラクトース,ソルビトールおよびマルチトール添加区ではわずかであった. (2) 判定培地では,供試菌はいずれもグルコース,フルクトースおよびスクロースを資化し,ガスを生成したが,その量および発生が始まる時期は糖質甘味料の種類および供試菌によってそれぞれ異なっていた.また,コントロール区,ラクトースおよびソルビトール添加区では供試菌の生育は認められたがガスの発生はなく,マルチトールではL.mesenteroides接種区のみで3日目以降にわずかに認められただけであった. (3) ソーセージを用いての実験では判定培地の結果を反映するように,10℃保存でグルコース,スクロースおよびフルクトース添加区は,9~12日目に顕著な膨張変敗が見られた.一方,コントロール区,ラクトース,ソルビトールおよびマルチトール添加区では膨張変敗の発生時期が遅れ,コントロール区,ラクトースおよびソルビトール添加区では保存期間中膨張変敗は見られず,pHの低下もわずかであった. (4) ソーセージに添加する糖質甘味料は,種類によりヘテロ発酵型乳酸菌による膨張変敗を抑制したが,これらの乳酸菌の細胞増殖は認められた. (5) 製品系での糖質甘味料の種類による膨張変敗発生の可能性について,判定培地で予測できることが確認された.