酸性飲料缶詰変敗菌A. acidoterrestrisの制御法を確立するために.本菌の芽胞の耐熱性を調べると共に,芽胞耐熱性および発芽後栄養細胞の増殖を抑制する物質の検索を行った. (1) A. acidoterrestrisの芽胞耐熱性(D値)は加熱時の浮遊液pHによってほとんど影響を受けないことが明らかとなった. (2) 市販酸性飲料中におけるA. acidoterrestris芽胞の耐熱性がD89℃=10.9~13.7分,D95℃=2.1~3.2分であり,一般的な酸性飲料缶詰の殺菌条件(90~95℃,15~20秒間)では完全に殺菌し得ないことが示唆された. (3) A. acidoterrestris芽胞の耐熱性を減衰させる食品保存料を検索し,リゾチームに芽胞の耐熱性を著しく弱める効果のあることを見出し,実際の酸性食品中においても同様の効果のあることを実証した. (4) A. acidoterrestris芽胞の発芽後栄養細胞の増殖を抑制する物質の検索を行い,リゾチーム,ε-ポリリジン,プロタミン,酢酸および脂肪酸エステル類にその効果を見出し,実際の缶詰食品への応用には安全性,使用制限,耐熱性などを考慮してリゾチームとε-ポリリジン,プロタミンまたは脂肪酸エステル類の併用が最も有効と判断された.