1988年の1月から7月に石川,静岡,神奈川,兵庫,福井,富山の各県において採集されたホタルイカの一般成分組成,無機質成分およびビタミン含有量を測定した.脂質は3月から5月に最大となる山形を示し,ホタルイカの肝臓中の脂質含量変化を反映していた.無機質成分のうち,CuとMnはホタルイカの体成長と共に3月から7月にかけて増加傾向を示し,特にCuは7月の値が3月の2倍に達した.全体重に占ある肝臓重量の比率は3月以降ほぼ横這いを示すことから,肝臓中のCuとMn含量が増加していると考えた.ビタミンB1は3月から5月にかけて増加したが,5月以降はほぼ一定の値を示し,この変化は主としてチアミン量の増加によるものであった.レチノールおよびトコフェロールはそのほとんどが肝臓由来と考えられ,レチノールは脂質と同様に4月から5月に最大となる山形傾向を示し,トコフェロールは3月から7月にかけて緩やかな増加傾向を示した.採集期間を通じて,ホタルイカが成長を続けていること,およびこの採集期間はホタルイカの産卵期に該当することから,これら栄養成分はホタルイカの成長や産卵と関連して変化することが示唆された.