食品添加物として使用されているカードラン(β-1,3-glucan)-リン酸三ナトリウム溶液中におけるカードランの溶存状態を調べた.カードランが溶解するNa3PO4の濃度範囲(0.05~0.4M)では,カードラン溶液のアルカリ濃度変化に伴う粘度変化はわずかであり,また,congo redの可視部吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax,485~490nm)はカードラン添加により大きく(518~520nm)red shiftし,円偏光二色性(CD)が観察された.カードラン-0.4M Na3PO4溶液に同じカードラン濃度の1M NaOH溶液を添加してゆくと,粘度の急激な低下とカードラン-congo red溶液のblue shiftが観察され,また,CDバンドは観測されなくなった. 以上のことから,カードランはNa3PO4溶液中で規則的な構造を採っているが,NaOH溶液の添加に伴い,random coilへと転移することが考えられた.