梅漬の塩蔵工程の産膜汚染過程から経時的に酵母を分離・同定し,酵母フローラの消長と産膜汚染中の成分変化を調べ,以下の結果を得た. (1) 梅漬塩蔵工程中に出現する主要汚染酵母は,K. apiculata, P. anomala, C. guilliesmondiiおよびD. hanseniiの4菌種であった. (2) 塩蔵中の酵母フローラの変化は,塩蔵初期にはK. apiculataが,産膜が発生する塩蔵3週間目以降にはP. anomala, C. guilliermondiiおよびD. hanseniiが主要な菌叢を示した.3カ月後には,ほとんどD. hanseniiのみが検出された. (3) 塩蔵中の梅酢は産膜酵母の増殖に伴って,クエン酸およびリンゴ酸は顕著に減少したが,食塩濃度には変化が認められなかった.これらの有機酸の減少は,主にP. anomalaおよびC. guilliermondiiにより資化されたことが明らかになった. (4) 梅漬の産膜汚染を誘導する役割を果たす酵母は,有機酸の資化能が強いP. anomalaであることがわかった.本菌種の増殖に伴って有機酸が資化され,pHが上昇することにより,塩蔵後期には耐塩性のD. hanseniiが優位な菌叢を占め,産膜汚染がさらに進行することが明らかとなった.