老化処理した大豆(エダマメ)子実および正常子実を用い,大豆1粒の近赤外透過スペクトルの解析による老化子実と正常子実との識別について検討し,以下の結果を得た. (1) 3日,5日または7日間老化処理した大豆子実,および正常子実の散乱補正(MSC処理)した近赤外透過スペクトルにおいて,老化処理日数の増加に伴い,800~1100nmの波長範囲でスペクトルの変化が観察された. (2) これらのスペクトルの主成分分析を行った結果,第2主成分および第3主成分の散布図において老化子実と正常子実とを識別することができた.第2および第3主成分スコアを用いた判別分析の結果,7日間老化処理した子実および正常子実の正判別率は,それぞれ100%,84%であった. (3) 大豆の粒重,水分量およびタンパク質含量と,各主成分のスコアとの相関を調べた結果,これらの成分は,老化子実の識別には影響を与えないことがわかった. (4) 第3主成分のloadingは,脂質のスペクトルと類似した形状を示した.老化に伴い大豆中の総脂質含量は変化せず,リン脂質含量が約1/2に減少したことから,第3主成分は大豆中のリン脂質の変化を反映しているものと考えられた. (5) 以上のことから,近赤外分光法により老化大豆子実と正常子実との識別が可能であり,この識別には大豆中のリン脂質の変化が重要な役割を果たしていると結論づけられた. 本研究の概要は日本食品科学工学会第44回大会で発表した.