焼麩の膨化に及ぼすグルテンドウの熟成の影響について検討した. (1) グルテンドウを20分間予備加熱した結果,60℃までは温度が高いほど比容積は大きくなったが,70℃では低下した. (2) グルテンドウを10℃および30℃で熟成し,比容積に及ぼす影響を経時的に検討した結果,10℃では熟成時間が長くなるほど比容積は大きくなった.しかし,30℃では熟成8時間で最大の比容積を示すが次第に低下し,24時間では膨化しなくなった. (3) 30℃で8時間以下あるいは10℃で数時間以上熟成したグルテンドウから得られた膨化物はふっくらとした丸みを帯び,ソフトでしなやかな感触を与え,大きな気泡が充満した蜂の巣構造を形成した. (4) 10℃熟成中のグルテンドウは硬さ・均一性が増した.しかし,30℃熟成では軟化し,次第に付着性・曳糸性が強くなり,グルテンドウとしての構造が維持できなくなった.これは微生物の増殖によるもので,熟成が長時間になると,pHが急速に低下し,腐敗が始まった. (5) 熟成中に原料に混在する微生物由来の酵素によってグルテンやでん粉は分解され,熟成中のグルテンドウの還元糖や水溶性タンパク質含量は増加する. (6) 30℃熟成の場合にはグルテンの一部が分解されるとグルテンドウは膨化し易くなるが,分解が一定以上進行すると膨化力を失うものと考えられた. (7) しかし,10℃では水溶性タンパク質の増加は認められなかったのに比容積が大きくなったことから,30℃とは異なる熟成効果が生じたものと考えられた.