不溶性Ca及びMgの可溶化に及ぼす食酢の種類の影響を明らかにするために,サンゴ粉と牛骨粉を用いて検討した. (1) Ca可溶化率は穀物酢,ブドウ酢およびリンゴ酢で高く,米酢や玄米酢で低かった. (2) Mg可溶化率は米酢,ブドウ酢およびリンゴ酢で高く,穀物酢や玄米酢で低かった. (3) 各食酢のCaおよびMg可溶化率と食酢のpHお662日本食品科学工学会誌 第45巻 第11号 1998年11月(8)よび酸度との相関関係を検討したところ,Ca可溶化率は食酢のpHと有意な負の相関があった.しかしMg可溶化率はいずれとも相関が見られず,Caとは可溶化の挙動が違うことが示唆された. (4) 穀物酢と酸度とpHが同一の酢酸溶液のCa及びMg可溶化率は,穀物酢とほぼ同じだったことから,穀物酢の可溶化を決める主要因はpHと推定された. (5) 米酢及び玄米酢では,酸濃度およびpHを同一とした酢酸溶液のCa可溶化率は米酢や玄米酢より顕著に高く,酸度やpH以外の因子の影響を受けていることが示唆されたが,Mg可溶化率も同様であった.玄米酢ではPがCaやMgの可溶化率を低下させている要因であることが示唆された. (6) リンゴ酢及びブドウ酢のCaおよびMg可溶化率は,酸度とpHを同一にした酢酸溶液の可溶化率と近く,可溶化率を決めている主要因はpHであることが示唆された. 以上の結果から,CaやMgの可溶化率は食酢のpHと関係するが,酢酸以外の成分の影響も受けるため,食酢を使用して食品中の不溶性CaやMgを可溶化させる場合には,食酢の種類による違いも考慮して,適切な食酢を使用する必要があることが示唆された.