ヘスペリジン配糖体をみかん缶詰に添加し,室温で保存し,1,3,6か月後にその白濁防止効果について検討した.その結果,ヘスペリジン配糖体は0.004%という非常に低濃度で,効果的にみかん缶詰シラップの白濁を抑制した.さらに溶存ヘスペリジン量は,シラップの透明度が増加するに従い増加していた.つまり,ヘスペリジンの白濁防止効果はヘスペリジン配糖体によるヘスペリジンの可溶化効果に起因していることが明らかとなった.またこの効果は,高い殺菌温度および酸度の影響を受けることなく安定していた. ヘスペリジン配糖体のヘスペリジン可溶化効果を果汁含有率50%のオレンジ果汁飲料に応用した.ヘスペリジン配糖体をオレンジ果汁飲料に0.05%添加して6か月間静置後,沈殿画分および上清画分に存在するヘスペリジン量を定量した結果,ヘスペリジン配糖体の添加により,全ヘスペリジン量の約90%が,溶存ヘスペリジンとして存在し,沈殿画分中の不溶性ヘスペリジンが大きく減少した.またこの効果は殺菌時間,殺菌後の冷却温度に影響されなかった. ヘスペリジン配糖体はみかん缶詰およびオレンジ果汁飲料中のヘスペリジンを可溶化することで,沈殿形成を効果的に抑制すること,温度や酸にも安定なことから産業的にも非常に使いやすい沈殿形成防止剤であると考えられる.