ウンシュウミカン,メロン,イチゴ,ニホンナシおよびブドウの5種類の果実について,HPLCにより糖を測定する場合の,アルコール抽出に代わる前処理法として,搾汁液を用いる簡便な方法を検討した. (1) 各果実において,室温下で搾汁し,直ちにHPLC分析することにより,エタノール抽出と同様の信頼性を有する測定値が得られた.なお,ウンシュウミカンでは搾汁法と工タノール抽出法により糖組成にわずかながら差異が認められたが,これは搾汁液と残さ中の糖組成が異なるためと考えられた.また,ウンシュウミカンは,搾汁率の違いがわずかながら果汁の糖組成に影響を与えるので,一定の方法で搾汁を行う必要がある. (2) 搾汁液を24時間,また,搾汁液を希釈,濾過した試料を48時間それぞれ室温下で保存したところ,ウンシュウミカンでは糖組成の変化は認められなかったが,他の果実ではショ糖の分解がおこった.ブドウでは希釈液,ブドウ以外の果実では搾汁液および希釈液について,それぞれ電子レンジを用いてマイクロ波処理すると,簡便にショ糖分解を軽減できることが明らかとなった. (3) 以上の結果から,果実の搾汁液を用い,マイクロ波加熱を適宜行う前処理法により,HPLCで多数試料の糖濃度を簡便に測定できることが明らかとなった.