食品産業における含油廃水のモデルとして粗レシチン/水エマルションを用い,種々の膜を用いて,透過流束やTOC阻止性能といった濾過特性の検討を行った.油滴の大きさより小さな孔径の親水性膜でクロスフロー濾過を行うことで,一定の透過流束とTOC阻止率が得られることが明らかになった.これらの膜では,透過流束は原液流量によって決定されるため,細孔径や材質によらずほぼ同じ定常透過流束が得られた.TOC阻止性能は,塩阻止性能30%のナノ濾過膜,限外濾過膜,細孔径0.22μmの精密濾過膜まで,ほぼ同じであり,遊離のリン脂質の除去には逆浸透膜かNaC1の阻止率が高く緻密なナノ濾過膜を用いる必要があることが分かった.逆に90%以上のリン脂質やトリグリセリドの除去濃縮を行うためには,0.22μm以下の細孔を持つ精密濾過膜であれば十分であると云える.油滴の大きさ以上の細孔径をつ精密濾過膜を用いた場合は,細孔構造や親疎水性によって,様々な特異的な濾過特性が見られた.非対称膜はデプスフィルターとしての使用の方が高い透過流束が得られること,油滴の大きさと同等のスポンジ形状の細孔を持つ対称膜を用いると透過流束が0近くまで減少すること,疎水性膜を用いると負のTOC阻止率が得られる場合があることが分かった.