発酵漬物に乳酸菌スターターカルチャーを利用することを目的とし,乳酸菌の選択と風味の向上効果について検討を行った. (1) 供試した48菌株の乳酸菌のうち9株は低温増殖能を有していた.特にLeuconostoc sp.D-133株,Lactobacillus casei L-14株は何ら栄養補給することなく緩やかに増殖し,有害微生物の生育を阻止して長期発酵を行うことができた. (2) 乳酸発酵大根の香気成分分析を行った結果,D-133株を接種して60日を経過すると「こく」や「まろやかさ」に関与するといわれている2,3-ブタンジオールが220μg/ml生成した.また,一定量以上の生成で不快臭となるアセトアルデヒド,アセトイン,ジアセチルはほとんど生成しなかった. (3) L-14株接種では遊離のグルタミン酸は培養開始時に2.6mg/100gであったのが,発酵60日後に16mg/100gとなり,うま味成分が増加することが明らかとなった. (4) D-133株,L-14株を接種した大根では,対照と比べてa値とb値の増加が抑制され,肉眼的にも白色が維持されたことから,乳酸菌接種による変色防止効果が確認された.