麻痺性貝毒による毒化カキ又はゴニオトキシン1∼4の標準品を試料とし,カキ水煮缶詰製造またはモデル水溶液中での加熱処理による貝毒の分解を検討した.加熱温度は80°C∼120°C,pHは6.0∼8.0とした. (1) 缶詰および標準品モデル系において,加熱処理による毒性値(MU/g)の減少は,一次反応式で近似することができた. (2) 温度およびpHによって貝毒の分解反応速度は変化し,温度が高いほど,またpHが高いほど分解速度定数は大きくなった. (3) 貝毒の分解速度定数は,温度及びpH依存性の式で表すことができ,pHと分解速度定数は,pH 7.0付近で屈折する直線の関係が示唆された. (4) モデル系で求めた温度と貝毒の分解速度定数との関係式から計算した加熱缶詰の残存毒性値は,HPLCによって実際に測定した値とほぼ一致した.このことから,いかなる温度履歴を経た試料の場合であっても,安全な加熱条件を推定することができた.