イカおよびイワシイシルの加温(30∼50°C)による速醸法での試醸を行い,試醸期間におけるアミノ酸などの成分の消長について検討し,以下の結果を得た. (1) 加温による速醸法では,イカイシルでは温度の上昇にともない各成分の生成速度が増加し,イワシイシルでは40°Cで最大となった. (2) 全窒素は,イカイシル(50°C)は10日,イワシイシル(40°C)では38日でそれぞれ市販品と同等の値となり,その後は平衡状態となった. (3) pHは速醸温度による大きな差は見られず,イカイシルは経時的に5.6から4.7へと低下したのに対し,イワシイシルは5.8から5.3とあまり変化しなかった. (4) 遊離アミノ酸は,イカイシル(50°C)は24日,イワシイシル(40°C)では38日で平衡状態となり,アミノ酸組成も市販品と同様なパターンが得られた. (5) 分子量5000以下のオリゴペプチドはイカイシル,イワシイシルいずれの場合も,グルタミン酸,グリシン,アスパラギン酸,プロリンなどが主要構成成分であり,イワシイシルがオリゴペプチドを多く含んでいた. (6) 有機酸はイカイシル,イワシイシルいずれの場合も乳酸,ピログルタミン酸が大部分を占め,速醸温度による影響はなく,また経時的変動も少なかった. 以上のことから,イシルの速醸法では,イカイシルは50°Cで24日,イワシイシルは40°Cで38日と通常の製法よりも非常に短期間で調製することができ,その成分も市販品とほぼ同程度であった.