イチョウの生長過程におけるクロロフィル,カロテノイド含量の変化から,次の様な傾向がみられた. (1) どの生長過程においても水分・クロロフィル・カロテノイド含量は,雄株が多かった. (2) 水分含量は雌雄株ともに6月が多く,8月を境に雄株は減少,雌株は増加した. (3) 総クロロフィルは雌雄株とも8月,クロロフィルaは雄株7月,雌株8月に,クロロフィルbは雌雄株ともに10月に多かった.特に,雄株の増加は雌株のおおよそ2∼3倍であり,11月には雌雄株とも減少した. (4) 全カロテノイドは雌雄株とも8月に急激に増加した.また,α-カロテンは雄株9月,雌株8∼10月にβ-カロテンは雌雄株とも10月に,さらに,ルテインは雄株8月,雌株8,9月に多かった. (5) 雌雄株ともに,クロロフィルa・総クロロフィルと,α-カロテン・全カロテノイドには1%水準で有意差がみられ,クロロフィルaが増加すると総クロロフィルも増加,α-カロテンが増加すると全カロテノイドも増加する関係にある.また雄株ではβ-カロテン,雌株ではルテインが全カロテノイドに影響を与えている. (6) すなわち,イチョウの生長過程によるカロテノイド・クロロフィル含量の変化には著しい差は認められないが,生長に関するカロテノイド・クロロフィルの増加には雌雄株ともα-カロテン・クロロフィルaが関与しており,さらに雌雄株にも生長による雌雄株別の特性が明らかになった.