O/Wエマルションは通常多くの食品物質として利用されており,その安定性は食品の味覚や風味の保持,また封入した高機能成分の安定な取り込みをするなどの食品機能を向上する上で重要なものである.O/Wエマルションを安定化させるために通常は界面活性剤物質が用いられるが,界面活性物質の特性が安定性を大きく左右する.したがって,適合した界面活性剤の選択が重要である.粒子の安定性を評価するために静置法や顕微鏡観察法がなどが行われている.しかし,それらの試験法は定性的な結果しか得られない場合が多い.そこでこの論文では,ポリオキシエチレン[20]ソルビタンモノパルミテート(Tween40)あるいはポリオキシエチレン[20]ソルビタントリオレート(Tween85)とトリオレインで乳化したエマルションについて,物理化学的に検討した.動的光散乱,濁度法,また同様に電気泳動光散乱法のようなコロイド化学的手法を用いてこれらのエマルションの分散特性を明らかにした.また,表面張力法を用いて粒子表面における界面活性剤の吸着挙動を検討した.Tween40とTween85をそれぞれ用いて調製したエマルションでは粒径や凝集過程,吸着挙動に差異が認められたが,ζ電位,油水界面における界面活性剤の被覆率については差異が認められなかった.これらの結果からTween40の方がTween85に比べて界面への吸着しやすいために粒径が大きいO/Wエマルションが調製された.またTween40で調製されたO/Wエマルションの方がTween85で調製されたO/Wエマルションに比べて全相互作用エネルギーが高いために凝集しにくく,濁度法で凝集速度と半減期は約二倍違いがあった.これらのことによりTween40の方がTween85に比べてO/Wエマルションを安定化することが結論された.