アガロースゲルおよび各種糖(単糖類として果糖,ブドウ糖,二糖類として蔗糖,麦芽糖)添加アガロースゲルの離漿速度の解析,動的粘弾性定数(貯蔵弾性率)を測定した. (1) 離漿量は全圧力(網目構造が収縮する際に生ずる圧+自重圧+外圧)の増加につれて増した.離漿量と全圧力の関係は上方に対して凹の曲線的関係を示し,その傾向はゲルの貯蔵弾性率の大きいゲルほど顕著であった. (2) 離漿量の経時的変化は,離漿速度dM/dtとするとdM/dt=k(1-M)2で表すことができる.ここでM=m/m∞(m:保持時間tにおける離漿量,m∞:平衡離漿量),kは離漿速度定数である. (3) アガロースゲルのアガロース濃度および糖添加濃度の増加によってゲルの貯蔵弾性率は増し,平衡離漿量は減少する.しかし,離漿速度定数は,アガロースゲルがアガロース濃度の増加につれて増すのに対して,糖添加アガロースゲルでは,糖添加量の増加につれて減少した. (4) 糖添加アガロースゲルの平衡離漿量は,30%(w/w)以下の濃度の糖添加量では,単糖類と二糖類に違いは見られなかった.糖添加量が40%(w/w)以上では二糖類添加アガロースゲルの方が平衡離漿量の値が多少低くなる傾向にあった. (5) 離漿の見かけの活性化エネルギーは,アガロースゲルでは,1.7kJ⋅mol-1,果糖添加アガロースゲルは2.8kJ⋅mol-1,蔗糖添加アガロースゲルは8.1kJ⋅mol-1であった.二糖類の蔗糖の添加は,見かけの活性化エネルギーを大きくし,単糖類の果糖添加よりも温度上昇による離漿速度の増加を抑制する効果が大きかった. (6) 離漿量の増加につれてアガロースゲル,各糖添加ゲルの貯蔵弾性率の値は減少した.これは,離漿によりゲルの骨格を形成している網目構造がゆるんだことに起因するものと考えられた.