自然界より分離した納豆菌株,市販納豆菌株および枯草菌 Bacillus subtilis ATCC6051株を用いて発酵させた大豆中のイソフラボン配糖体およびそのアグリコン含有量を調べた.岩手県の稲ワラより分離したIF9916株および枯草菌 Bacillus subtilis ATCC6051株を除いて,納豆菌による発酵後のイソフラボンアグリコンの増加はわずかなものであったが,菌株により若干の相違が見られた. 大豆および大豆抽出液においてIF9916株および市販納豆菌のβ-グルコシダーゼ活性およびイソフラボン含有量の変化について経時的に調べた.IF9916株は強いβ-グルコシダーゼ活性を持っていたが,市販納豆菌のβ-グルコシダーゼ活性は非常に弱いものであった. 市販納豆菌で発酵させた大豆および大豆抽出液においては,納豆菌の対数増殖期にイソフラボン配糖体の著しい減少が見られたが,アグリコンに分解されたのではなく,サクシニルイソフラボンに変わるためであった.納豆においては減少したイソフラボン配糖体は再び増加し,それとは逆にサクシニル配糖体は減少した. IF9916株で発酵させた納豆において,発酵の初期にイソフラボン配糖体の減少に伴ない市販納豆菌と同レベルのサクシニル配糖体が生成されたが,発酵20時間目からはイソフラボンアグリコンの急激な増加が認められた.培養40時間でダイゼインは発酵前の20倍に,ゲニステインは約11倍に増加した.