塩化ナトリウムと加熱を併用した抗菌作用について大腸菌( E. coli IFO3301)を用いて検討したところ,以下に示す結果が得られた. 1) 種々の薬剤添加と加熱処理との併用効果を調べたところ,塩化ナトリウムの併用が高い抗菌効果を示した. 2) 塩化ナトリウムと加熱との併用効果は酸性側で高く,炭素鎖の長い有機酸を添加することでさらにその効果は増大した. 3) 加熱処理により,菌表層部の疎水性が高くなり,さらに塩化ナトリウムの併用により,菌表層部の疎水性の増大が認められた. 4) 塩化ナトリウム存在下で加熱処理した菌では菌体膜のリポ多糖体の遊離が強く認められた. 5) 加熱処理は菌体からの紫外吸収物質の漏洩を促進したが,塩化ナトリウムの併用はその作用を抑制した. 6) 塩化ナトリウムと加熱の併用効果は,加熱により大腸菌の菌体膜が損傷し,塩化ナトリウムに対する感受性が増大したためと推察された.