仙草( Mesona procumbens Hemsl.)水抽出液とタピオカデンプンを急速に加熱,冷却するとゲル化するが,そのゲルを35℃以上に加熱すると堅いゲルになることを明らかにした.この挙動はコンニャクマンナンゲルと類似しているがtanδの数値が異なり,CEM-デンプンゲルの再加熱によるG'の増加は,急速糊化により不完全に膨潤したデンプン粒が再加熱でCEMから水素結合の要因を取り込んでゲル構造を強めたことによるものと推察した. 仙草抽出液の稀薄溶液の還元粘度は希釈により増加したが,溶液の多糖類分子の広がりは高分子電解質としての多数の電荷の静電的反撥により大きくなったと推察される.FUOSSのプロットにより極限粘度を求めたが構成多糖類の大きさは比較的小さいと推定された. ゲル化直後と50℃に加熱したゲルについて,50%エタノールに浸漬後,クライオ走査電子顕微鏡で割断面を観察した.膨潤,変形したデンプン粒の表面を薄膜が覆っていることが認められ,その厚さは50℃加熱ゲルの方が大きいことが明確であった. 前報の結果と併せて考えると,デンプン粒の表面に露出してきた糖鎖と仙草抽出液の多糖類が,何らかの相互作用により薄膜を形成し,再加熱温度の上昇により膜の厚みとともに粒子の強度を増し,懸濁液のように粒子分散効果が表われ始めて,かえって内部摩擦,G”が増加してゲル構造を弱めたのではないかと推察された.