米に含まれる抗原活性の米粒内分布を明らかにし,通常精白米あるいは玄米に比較して,高度精白米の抗原活性がどの程度低下しうるかを,定量的に示すことを目的として生化学的な検討を行った. (1) 蛋白質含量は米粒表層画分で高く,内部の画分になるに従い低下する分布を示した.70%高度精白米の蛋白含量は玄米の約7割であった. (2) 塩可溶蛋白質含量は米粒表層20%で高く,それより内部では低下し,中心部までほぼ均一であった.その抗原活性は米粒表層画分で極めて高く,内部の画分で急激に低下した.この結果,米粒全体で見ると米の抗原活性は米粒表層に局在する分布を示すことが明確となった. (3) 精白歩合を70%まで高めることにより,抗原活性は玄米の4%程度にまで低減化することが明かとなった. (4) 塩可溶蛋白質と抗原活性の米粒内分布には若干の品種間差が認められたが,胚乳中心画分に存在する比率に品種間差は認められず,蛋白質含量が同レベルであれば,いずれの品種を原料として用いても,同程度に抗原活性が低減化された高度精白米の調製が可能と考えられた. (5) 本報告のデータは,今後高度精白米の臨床的な検証および安全な利用法の検討を進める上で,基礎的知見として有効に活用できるものと考えられた.