大腸菌に対するプロタミンとモノカプリンとの併用による相乗抗菌効果について検討したところ,以下に示す結果が得られた. (1)大腸菌に対する抗菌力はプロタミン濃度に依存し,0.05%の場合,30℃,40時間培養後も菌の増殖がほとんどみられなかった. (2)プロタミンと各種薬剤を併用したところ,モノカプリンとの併用で強い抗菌力の発現が認められた. (3)プロタミンとモノカプリンを併用した場合,抗菌力は弱酸性から中性域(pH5-7)でより強くみられた. (4)大腸菌のコロニー形成阻害能が,プロタミン単独またはプロタミンとモノカプリンの併用区で強く認められた. (5)プロタミンは菌表層部の疎水性を増大させ,また,菌体内の紫外吸収物質の漏洩はモノカプリンによって促進された. (6)菌体膜のコハク酸脱水素酵素の活性はプロタミン処理により低下し,モノカプリンを併用することで,さらに同活性の低下がみられた. (7)両薬剤の併用効果はプロタミンにより薬剤感受性が増大し,それによりモノカプリンの外膜透過性が高まり,その作用点である細胞膜に到達し,紫外吸収物質やSDHの漏洩など膜機能に障害を与えたためと推定された.